店員Sです。
清里フォトアートミュージアムで開催中の「島の記憶 – 1970~90年代の台湾写真」展を見にきました。

今年の5月に台中・国立台湾美術館で開催されていた特集「回望 臺灣攝影家的島嶼凝視 1970s-1990s」を日本に持ってきたものです。

ミュージアムは、清里から車で約15分、別荘地の奥の奥にある、木立に囲まれた空間です。
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今回の企画は、台湾を代表する写真家・張照堂氏と、先日の「写真都市展 −ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち−」の記事 でも紹介した沈昭良氏のキュレートにより、台湾の著名現代写真家11名の作品が集められた特集展示です。

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張照堂氏のほか、《攝影家雜誌》を創刊した阮義忠氏、侯孝賢作品のスチルや雲門舞集の作品集なども手がけた劉振祥氏などにより、70〜90年代の台湾を撮影した作品が集められています。
(展示会場内は撮影禁止なので、会場内の写真はありません)

70〜90年代といえば、1987年の戒厳令解除を挟んで、台湾社会が大きく変化していった時期です。
作家のプロフィールを読むと、当時の台湾の写真家が単にアート作品としての写真を撮っていたのではなく、哲学、郷土文学、台湾のローカル文化、社会問題、民主化運動などに強く関心を持ち、当時の台湾を記録に残そうという意志を持って写真を撮っていたことがわかりました。

展示点数はそれほど多くありませんが、作品一枚一枚が濃厚で、一緒に展示されている写真家一人一人の経歴や紹介もとても詳しく、時間をかけてゆっくり読み込む楽しみ方ができます。

本編の展示を観終わってラウンジスペースに出ると、そこにも嬉しいものが!
出展作家が今までに出した写真集が多数集められて、自由に見ることができます。
日本で台湾の写真家の写真と写真集が、これだけまとまって観られる機会はとても少ないと思うので、とても貴重ですよ。ぜひ、ソファに座ってじっくり眺めてください。
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 台湾の写真雑誌《攝影者雜誌》(今回の展示にも出品している阮義忠氏が主宰)のバックナンバーもそろっています。
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こちらは、この企画のキュレーションを行った写真家・沈昭良氏の最新作《台灣綜藝團》。
「舞台車」シリーズの流れをくむもので、舞台車(台湾のお祭りなどに出現する移動式舞台)で歌やダンスを披露する歌手やダンサーたちの日常にフォーカスした作品集です。
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沈氏の作品集はすべて自費出版で、しかも重版はかけないそうなので、ここで見ることができてよかったです。

出展者の一人、劉振祥氏は侯孝賢作品のスチルや、台湾を代表する舞踏集団「雲門舞集」の作品集なども手がけています。今回の展示には、90年代の民主化運動や社会運動やデモなどを記録する写真を出展していました。
下の写真の右下にあるのは《大佛‧有抑無:劉振祥的「大佛普拉斯」影像紀錄》。昨2017年の金馬獎(台湾で行われる映画賞。中国語圏映画のアカデミー賞的存在)を総なめにした映画《大佛普拉斯》(黃信堯監督)のスチル集です。
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《大佛普拉斯》の黃信堯監督も、かつて積極的に運動に参加し、現在は社会的な視点から映像作品を作っている監督です。この写真集《大佛‧有抑無》に収録されている写真は、人物だけでなく、風景を撮ったものでも、いちいちものすごくエモーショナルで、今回の展示内容であるデモの記録とはまた違った雰囲気の作品集なのですが、「社会的視点とアート性の兼備」という点が、劉振祥氏と黃信堯氏に共通しているな、とSはちょっと思いました。


このミュージアムは、雰囲気からするとバブル時代に企業の保養所として建てられたもののようで、空間の作りがとても贅沢です。
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 ラウンジでは、侯孝賢監督の『非情城市』DVDが流されていました。
(無造作にいくつも置かれているソファは、もしかしてル・コルビジェですか?)
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交通がちょっと(かなり?)不便な場所にありますが、夏休みの小旅行に清里に足を伸ばして見てはいかがでしょうか?

「島の記憶 – 1970~90年代の台湾写真」展 
kmopa.com/?cat=6
会期:2018 年7 月7日至12月2日
会場:清里フォトミュージアム http://www.kmopa.com/
山梨県北杜市高根町清里3545-1222
時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
*12月は10:00〜17:00(入館は16:30まで)