紀行エッセイ『坐火車的抹香鯨』 (電車に乗ったマッコウクジラ)
文/王彥鎧 イラスト/NOBU

 台湾は小さい。思い立って、ぷらっと田舎の小さな町へ旅に出ることができる。
 台湾は大きい。そこには、台湾で生まれ育った人も、生まれてから一度も見たことがなかった風景、人、時間が存在している。

 メジャーな観光地でもなく、オシャレな大都市でもない、台湾のひなびた田舎町を訪れた記憶の断片を、さくっと読める短い文章と、ノスタルジックな色調のイラストで語るエッセイ集。
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 2013年ドイツ・ライプツィヒブックフェアの「世界で最も美しい本」デザインコンテスト銀賞受賞。 
 台湾を代表する絵本作家・幾米(ジミー)も絶賛している。

 本書に登場するのは、彰化、雲林、苗栗、屏東、台東など、地方の小さな街や、そこでの過ごし方。1編1編は10~15分程度で読める短さなので、飽きずに次々読んでいける。
 旅先としての台湾の人気は高まる一方で、二度、三度と訪れる人も増えている。台北や台南には何度も行ったので、今度はちょっとマイナーな地方にも行ってみたい台湾リピーターが、台湾のひなびた田舎町のイメージを膨らませる(または行ったような気になる)のにうってつけの本。 
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 ローカル電車に乗って、彰化、雲林、苗栗、屏東、台東、あるいは船で澎湖や金門などの離島へ。
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 「台湾一美しい」と言われる海辺の無人駅で、風に吹かれて8時間過ごしたこと。

 釣り人のおっさんたちだけが集まる岸壁の売店で、なぜか売られているハイカラなコーヒー。

 大学の卒業旅行代わりに行った山小屋の庭で、布団にくるまってフォークソングを歌い明かした夜。

 何でもないけれど、その時そこに居なければ見えなかった景色、聞けなかった音、食べられなかった食べ物など、とぎれとぎれではあるがなぜか鮮明に残っている旅の記憶の断片を、短文と、ノスタルジックな色彩のイラストでつづった紀行エッセイ。
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 2011年の刊行だが、文章のテーマには流行り廃りのある事物をほとんど含んでいないので、いま読んでも奇跡的なほどに古びていない。
 台湾旅行ブーム且つ、SNSの影響で長い文章が読まれなくなったと言われる今こそ出したい1冊。

                    
文/王彥鎧 1960年代、台湾・彰化生まれ。広告ディレクター
イラスト/NOBU 1970年代生まれ イラストレーター
https://www.books.com.tw/products/001049548

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(店員S)