『[図説]台湾の妖怪伝説』何敬堯 著, 甄易言 訳 
 原書房より 2022/06/18 刊行
2206台湾の妖怪伝説
ISBN 9784562071845  A5・320ページ
定価3,520円(本体3,200円+税)
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※以下の記事は『「図説」台湾の妖怪伝説』の原書《妖怪臺灣地圖:環島搜妖探奇錄》に関する紹介です。原書房刊行の日本語版とは、仕様が異なる部分があります。ご了承ください。

『妖怪臺灣地圖:
環島搜妖探奇錄
妖怪臺灣地圖(封+立)
仮タイトル:妖怪台湾地図――奇しを尋ねて島一周
著者:著・何敬堯 Ho Ching-Yao、イラスト・小G瑋/想方子工作室
聯經出版 2019年5月14日
ノンフィクション/民俗学/歴史

【概要】
 「台湾初の、台湾土着の妖怪の大百科事典」として台湾で大きな反響を呼び、台湾妖怪ブームの盛り上げ役となった書籍《妖怪臺灣:三百年島嶼奇幻誌‧妖鬼神遊卷》に続く第2弾。
 前書で著者は膨大な数の台湾の古い文献の中から、台湾の伝説、怪物、鬼神、奇妙な現象などを蒐集してきたが、本書《妖怪臺灣地圖:環島搜妖探奇錄》では、著者が文献資料の中だけでなく、実際の空間の中に、妖怪伝説を探すものである。著者は、台湾妖怪の伝説、言い伝えの残る台湾島内の各地に実際に足を運んで現地を取材し、妖怪伝説の生まれた土地柄、環境、地勢、文化等について、各考察・紹介している。
 前書と本書の位置づけについては、著者は本書序文にて「《妖怪臺灣》は台湾妖怪の文献資料庫であり、《妖怪臺灣地圖》は台湾妖怪文化のフィールドワークである」と説明している。つまり、《妖怪臺灣》は、文献資料の中を時代ごとに考察するいわば「縦糸」方向の作り、《妖怪臺灣地圖》は、実際の空間の中を地域ごとに考察する「横糸」方向の作りとなっている。

 《妖怪臺灣地圖》は、全ページフルカラー。現地取材の写真を多数収録し、台湾妖怪ブームで台湾各地の伝説や奇譚などに興味を持った読者が、「妖怪旅行」を計画するための指南書としても利用できる。その他、古文献内の妖怪を描く図版や、イラストレーター小G瑋によるカラーの妖怪イラストも多数収録し、前作よりかなりビジュアル要素を増やしているのが特徴である。


●本書の目標と内容(著者「序文」より抜粋)
 長い歴史を持つ日本の妖怪文化が、時代の変化や地域の違いによって少しずつ変化してきたように、台湾に土着する妖怪たちも、歴史や地域によって変化してきたはずである。幻のようなものである妖怪を追いかける大きな手掛かりのひとつが、その土地その土地の特性や文化だ。日本の妖怪研究書、石井正己の『図説 遠野物語の世界』は、妖怪研究者でもあり民俗学者でもあった柳田国男の『遠野物語』に登場する実際の場所を写真とともに詳しく紹介し、妖怪の生まれた土地の姿を読者に伝えている。同じく藤田敏明教授監修の『京都魔界探訪』は、京都一千年の歴史の中の怨霊、妖魔降伏、妖怪伝説の残る寺、霊山、不思議な場所など72の地点を、風景写真や古文書の図版など共に紹介している。著者はこれらの良書のスタイルを参考に、台湾妖怪の伝説と地域との関係を考察しようとした。

 本書の特徴は2つ。第一に「旅行」と「研究」の融合である。過度に難解な学術的論述は避け、親しみやすく、簡潔な表現を心掛けた。第二に、各章には必ず実景の写真を配した。妖怪に関係する場所の風景を提示することにより、読者の妖怪伝説へのさらなる興味を引き起こそうとしている。

 本書では、台湾の県・市ごとに章を立て、各県・各市で少なくとも1つのスポットを紹介し、各地の伝説が形成された背景と文化的な脈絡を読者に理解してもらおうとしている。最終的に、著者は60の「奇景」を選出し、60篇の文章で紹介した。


【著者について】何敬堯(ホー・ジンヤオ)
何敬堯さん+妖怪台湾地図
 1985年台湾・台中生まれ。小説家。妖怪研究家。国立台湾大学外国文学系、国立清華大学台湾文学所卒業。著者・何敬堯氏は、妖怪が登場する日本の時代小説の愛好者であり、「台湾を舞台に、台湾の妖怪が登場する小説を書きたい」と思いたち、参考のために“台湾の妖怪”に関する資料を探したが、体系的にまとめられた本は全く見つからなかった。そこで、自ら古文書や古い新聞など五百点以上の資料にあたり、そこに記録された怪異現象を収集し続けた。初期のメモは30万字に及び、それを整理、分類し、299点の台湾妖怪に関する記述を《妖怪臺灣》としてまとめた。
 作品に、小説《幻之港―塗角窟異夢錄》《怪物們的迷宮》《妖怪鳴歌錄FORMOSA:唱遊曲》、共著に《華麗島軼聞:鍵》《百年降生:1900-2000臺灣文學故事》などがある。2018年3月から約1年間、台南にある国立台湾文学館での‟台湾妖怪と文学“をテーマにした特集展示「魔幻鯤島,妖鬼奇譚──臺灣鬼怪文學特展」の企画・監修に全面的に携わった。2019年5月《妖怪臺灣》の続編となる《妖怪臺灣地圖:環島搜妖探奇錄》(聯経)を刊行。

(原書房より2022年6月刊行予定)

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「僕は台湾妖怪の"轉型正義"をやってるんです」ーー台湾の妖怪研究家・作家 何敬堯さんに聞く


②関連書
【版権ご紹介】何敬堯『妖怪臺灣:三百年島嶼奇幻誌‧妖鬼神遊卷』(聯經/2017年)