『媽媽是一朵雲』(仮題:ママは おそらのくも)
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文:海狗房東  絵:林小杯  出版社:巴巴文化 2019年


2
あまつぶが ぽたぽた おちてきて、 しっとり しめって すずしくなった。
そういうとき ママは いつも こういった。
「カエルはね、 はだが しめって ひんやりしているほうが けんこうなのよ!」
3
ママが いなくなってから
パパは この ちいさなおかに のぼらなくなった。
ママを おもいだしてしまうから と パパはいう。

カエルくんは もっと ママのことを おもいだしたいと おもった。
そうすれば きょうの しゅくだいに どんなふうに こたえればいいか わかるから。
4
「あのくもは、 はな みたい」
「あのくもは、 ぶどう みたい」
「とおくの あのくもは、 さかな みたい」
くもは どんどん ふえて、 どんどん くらく、 おもたくなってきた。
「いちばん とおくの あの おおきな くもは、 なにに にてるかな?
 なにに にてるかな……」

かぜが やさしく ふいてきて
カエルくんは
ねむってしまった……。
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はなに みえた くもは、 もっと おおきな はなに なっていた。
ぶどうは かぜに なんつぶか たべられて しまっていた。
さかなは あめに なって、 おおきな うみに およぎだしていた。

いちばん おおきかった くもは すこし ちいさくなって
だんだん なにかに みえてきた……。
5


ママとの別れを経験したカエルの子が、一歩前へ踏み出すその瞬間を、美しい夕焼けのなかに描き出す。繊細な色使いでありながら力強い絵が、子とパパの背中を押してくれる。


【著者プロフィール】
文:海狗房東(海辺の犬の大家さん)
海辺で出会った犬を住人として迎え入れたため、このペンネームをつけた。教育学を学んだが、子どもに教えるより、子どもに教わることのほうが多い。現在はストーリーを書いたり、語ったり、語り方を教えたり、絵本の翻訳をしたりしている。読者に感動や癒し、笑い、幸福、あるいは新しい観点を届けられるような物語を書き続けたいと願っている。自分自身が、雲になるその日まで。絵本作品に『花地蔵』、『一緒に遊ぼうよ』(我們一起玩好嗎)など。

絵:林小杯(リン・シャオペイ)
1973年、台湾・台北生まれ。台湾・文化大学美術学部卒業、台東大学大学院児童文学研究科修了。1999年、絵本『魚ごっこ』(假装是魚)でデビュー。信誼幼兒文學獎、好書大家讀、開卷年度最佳童書、豐子愷兒童圖畫書獎首獎、Nami Concours插畫獎入選、金鼎獎など、台湾での受賞歴多数。初めて日本で翻訳出版された『カタカタカタ おばあちゃんのたからもの』(喀噠喀噠喀噠)(宝迫典子訳/ほるぷ出版)が2019年の産経児童出版文化賞・翻訳作品賞を受賞。
鉛筆、水彩、マーカーペンによる自由なタッチが特徴的で、パソコンを使ったコラージュの手法も多用する。身近な題材から描く、幻想と現実を巧みに融合したストーリーで、何気ない温かみや登場人物の繊細な感情を表現。突飛な設定やプロットは必要なく、平凡な物事のなかにミラクルが潜んでいると信じている。絵本作品に『絵描きが大好きなアフェイ』(阿非、這個愛畫畫的小孩)、『明日出発しよう』(明天就出發)、『月光スケート場』(月光溜冰場)、『きょうりゅうバスで学校へ』(騎著恐龍去上學)、『きょうりゅうバスで図書館へ』(騎著恐龍去圖書館)など。


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