〔グラフィックエッセイ〕
紙上行旅的移動風景
Paper Travel――六十種台灣觀察的進行式』
鄧彧/著、大塊文化/出版
Pt
-進行中の台湾の60の移動風景-

隅々まで物語る版画みたいな絵と微笑む柴犬の伴いからなる台湾の懐かしい原風景。 何回見てもどこからめぐっても楽しいグラフィック本。

畫一幅台灣小角落的紙上紀錄片

pt1
台湾の路傍によく見る落花生と菱の実、釜焼き芋を販売するトラック。冬に暖かい品々。
pt2
朝から道端によくあるお握り屋台。熱々のもち米に色々な具を包んである、1日のエネルギーのもと。

ブックデザインのこだわり:
http://okapi.books.com.tw/article/index/3256


――作者序 台湾の街角を描いた紙のドキュメンタリー 文字よりも、画に心を動かされることが多かった。自分でも、なにかあれば画にして伝えることが習慣になっていた。そんな私がイラストと「文章」で本を作ることになるのだから、本当に不思議だ。 絵を描くという作業は、幼い頃からずっと人生の大きな部分を占めてきた。勉強嫌いだった中高生時代は、漫画ばかり描いて過ごしていた。漫画を描いている時は疲れ知らずで、クラスメイトを主人公にした漫画本を何冊か作ったこともある。今思えば、この頃からすでに「ZINE」を愛していたわけだ! 幼少期(おそらくは生まれ落ちたその時)から、美術にとても関心があり、大きくなったらきっと画家になるのだと思っていた。ところが中学、高校と美術とは無縁の生活で、なにを思ったのか、希望する職業に弁護士と書いたこともあった。大学に入ってから古美術品の修復を学び、ようやく美術と関係のあるところに戻ってきた。 もうすぐ卒業という時期になって、結局のところ自分は平面デザインが好きなのだと気づいた。そこから関連する授業に出たり、独学したりして、デザインの仕事に就き、今に至る。本当の意味で紙と印刷について理解するようになったのは、会社に勤めはじめてからのこと。紙の種類や印刷の方法を変えることで生まれる、あらゆる効果が面白かった。温かさの伝わってくる紙の手ざわりに、私はすっかり魅入られてしまったのだ。 紙面で旅行記を作るきっかけになったのは、ある東京旅行だ。まさかそのおかげで、企画からデザイン、印刷、出荷までのすべてを自分で担う、ひとり出版の道に足を踏み入れることになるとは、思いもかけなかった。   移動屋台のある風景を記録するようになったのは、ある日、今川焼の屋台を見かけてからだ。手描きの不揃いな看板が掲げられ、緑がかった灰色の幌がかけられた改造バイクは、配色の美しさも完璧だった。バイク、自転車、手押し車などなど、日常に溶けこむ屋台の一つひとつが、実は店主が心をこめて作り上げ、経営しているものなのだと気づき、私は心を打たれた。それから、私は台湾の街角を紙に記録するようになった。 目次    ※各章それぞれ最初の数話のみ抽出 Chapter 1 手押し車でどこまでも 杏仁茶タイムマシン ビタミンたっぷり果物の壁 ちまきの宝山 伝統の手作りサイダー …… Chapter2 時をかける自転車 革靴の魔術師 資源回収の悲喜こもごも 時空トンネルを抜けてきた映画宣伝車 アイスクリーム交響曲 …… Chapter3 バイクが地球をまわす 主演男優賞は緑豆蒜 バナナ遊園地 ポン菓子の誓い 熱帯フルーツの役割一覧 …… Chapter 4 タイヤは四季をめぐる ピーナッツと菱の実はよきお隣さん からだ震わせピザ焼いて 北京ダックの美しさコンテスト ……
【試訳】 杏仁茶タイムマシン レトロな手押し車は、過ぎ去りし時代のタイムマシン 日本時代から現代までひとっ飛びして 各地の旅人にエネルギーをたっぷりくれる 「昔ながらの」杏仁茶は、お米の割合が高め。おかげで透明なつやが出て、濃厚な味わいになる。杏仁が多ければ乳白色になり、爽やかな口当たりに仕上がる。 そのまま食べてももちろんおいしいけれど、お腹をいっぱいにしたいなら、膨餅や焼餅をあわせるのもまたよし。油條と一緒に食べる人も多い。器からあふれんばかりの杏仁茶が、油條に吸われていくその瞬間、食べる人の心も一緒にとろけていく。 市販の杏仁茶は、アーモンドエッセンスを加えたものがほとんどで、刺激的な匂いが鼻をつく。でもこのシンプルで素朴な味わいが、化学薬品に再現できる? 膨餅=小麦粉で作られる、中が空洞になった丸いお菓子 焼餅=小麦粉の生地を平たく焼いたもの
油條=台湾式の揚げパン

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