日本と台湾を自由に行き来できなくなって、はや1年。
 そんな「台湾ロス」の人びとの心に小さな喜びを与えてくれていたもののひとつが、台湾に関する本ではないでしょうか?

 昨2020年の日本の出版物総販売額は、コロナ流行下の巣ごもり需要(と、「鬼滅」効果)で、前年比+4.8%の成長。その中には、「現地に行けないならせめて本で、台湾を感じたい」と、台湾関連書を買った人の分も含まれているでしょう。
 太台本屋 tai-tai booksでも、そんな読者のために「日本語で読めるおススメの台湾作品」をセレクトして紹介する小冊子「TAIWAN BOOKS 台灣好書」を企画、製作し、大きな話題になりました(発行:台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター)

 そして、日本の書店でも、台湾の本を応援してくれるお店が少しずつ増えています。そんな日本の「台湾推し」の書店さんをピックアップしてご紹介しています。

 その第3回は、第1回の「内山書店」さん、第2回の「東方書店」さんと同じく、東京・神保町のすずらん通りにある総合書店「東京堂書店  神田神保町店」さんです。 

(今回の特集は、太台本屋 tai-tai booksがいつも特にお世話になっている書店さんを、独断でピックアップしてご紹介しています。もちろん、日本全国の「台湾本推し」の書店さん、1点でも台湾作品の日本版を置いてくださっている書店さんに、この機会を借りて、お礼を申し上げます)

※現在、コロナウイルス感染拡大により、各店の営業時間、休店日などは通常と違うものになっている場合があります。来店の際には、各店のサイト、SNS等でご確認ください。

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創業130年超の老舗書店に出現した台湾コーナー
東京堂書店 神田神保町店
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 東京堂書店は創業明治23年(1890年)、130年以上の歴史をもつ書店。

 神田神保町店は、三省堂書店神保町本店、書泉グランデと並ぶ「神保町三大書店」の一つ。
 大型の総合書店でありながら、特に文学、人文系書において、独自の選書スタイルを持ち、神保町周辺にある出版社の編集者や、作家にファンが多い書店です。1,2階にカフェを併設。また特に美術、デザイン、写真などビジュアル系の人文書の品揃えが良いので、コロナ前は、外国人のお客さんも多く来店していました。

 そんな老舗書店の3階文芸コーナーに、2019年3月、突如「台湾」が出現。台湾文学の翻訳書をはじめ、日本で出た台湾関連書、旅行ガイドなど約150点が平台に並びました。書籍の多くには書店員さんお手製のPOPがワイヤーで飛び出すように展示され、頭上には大きな天燈の写真も。
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 ↑2019年3月のようす。


3年目に突入した台湾コーナー

 期間限定かと思われたこの台湾コーナーは、少しずつテーマを変えながら、その後、固定コーナーとして継続され、その後、なんと丸2年間も続き、いま3年目に突入
 昨2020年11月からは、ドキュメンタリー映画『私たちの青春、台湾』の公開に合わせ、「香港」を加えたコーナーとして更に拡大。特に香港の民主化デモに関連する書籍を多く揃えました。
 2021年3月現在、約250点の台湾、香港関連書籍が揃っています。
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 こんな「熱い」コーナーをたった一人で作っているのが、同店の文芸担当のKさんです。
 映画好きのKさんは、『牯嶺街少年殺人事件』4Kデジタルリマスター版を観たことをきっかけに、台湾に興味を持ち始め、台湾関連書を集めたコーナーを作りました。コーナーのために、台湾に関する本を仕入れたり、自分でも読んだりしているうちに、どんどん台湾にはまっていき、コーナー作りに更に熱が入るようになったそうです。
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 ↑Kさんによる手作りの作品解説POP。


ジオラマ風ディスプレイや「リング平台」が出現!

 東京堂書店さんの台湾&香港コーナーのすごさは、品揃えだけではありません。
 Kさんによる「推し本のディスプレイ」の熱量がとんでもないのです。

 陳柔縉台湾博覧会1935 スタンプコレクション発売時(2020年12月)には、ジオラマ風の楽しげなPOPを自作し、神保町のメインストリート「すずらん通り」に面する店頭ショーウィンドーで展開。
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 そして台湾の新人作家・林育徳のリングサイド発売時(2021年2月)には、店内にこんな「特設リング」が出現しました。
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 ↑林育徳『リングサイド』を中心に、プロレスや格闘技関連の作品がリングに集結!

 これらのPOPやクラフトはすべて、Kさんがお昼休みなど時間を見つけて日々コツコツ作っているそうです。
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 ↑「とびだすプロレスラーPOP」もKさんの力作!

 Kさんのこの‟もっと台湾や香港の事を知りたい、その魅力を一般の日本の読者にも伝えたい”という情熱のおかげで、『台湾博覧会1935』は発売直後に東京堂書店週間売れ行きベストテンで最大3位、『リングサイド』は最大5位になりました(快挙)! 2021年4月に発売された、呉明益さんの『複眼人』も、総合6位(2021年4月13日調べ)と好調です。
 現在も、西表島に一人暮らす台湾人老女と、台湾人炭鉱夫の記憶をめぐるドキュメンタリー映画と書籍『緑の牢獄』に関する特集など、朱天文侯孝賢(ホウ・シャオシェン)と私の台湾ニューシネマ関連企画など、台湾に関する売り場企画は継続中です。


 神保町周辺には、最近、「台湾豆乳大王」や、「台湾式朝食 健康豆漿 水道橋店」など、台湾のローカル軽食が楽しめるお店も増えてきています。東京堂書店さん、東方書店さん、内山書店さんをハシゴして、台湾軽食で休憩、という「台湾books&台湾おやつ散歩」はいかがでしょうか? 

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【東京堂書店 神田神保町店 文芸担当Kさんおすすめの台湾本】
自転車泥棒 著 呉明益 訳 天野健太郎 文藝春秋
Kさんコメント:  
「紛う事なき世界文学の名作。河出書房新社の池澤夏樹さん編纂「世界文学全集」に勝手に入れたいくらい……」

台湾人生 著 酒井充子 光文社知恵の森文庫
Kさんコメント:  
「日本統治時代に生まれ育った台湾の人びと、その激動の人生の記録。日本では目下台湾ブームですが、忘れてはいけない歴史にも思いを馳せるべく、手に取りやすい本書を推薦します」

書店本事 台湾書店主43のストーリー著 郭怡青 訳 小島あつ子,黒木夏兒 サウザンブックス社
Kさんコメント:  
「台湾の本屋さんへのエールを込めて。日本以上に出版不況ということですが、さまざまな形で生き延びようとしている本屋さんの姿は、日本の書店員にも勇気を与えてくれます」


東京堂書店 神田神保町店
住所:東京都千代田区神田神保町1丁目17番地
営業時間 11:00~19:00
年始を除き無休
http://www.tokyodo-web.co.jp/
Twitter:@books_tokyodo

(文責:店員S 写真:店員K,店員S 2021年3月取材)

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