この数年、韓国文学の浸透ぶりは目覚ましく、いまや町の小規模の書店にも韓国文学が並ぶようになりました。韓国文学にはまだまだ比べようもないですが、日本で刊行される台湾文学も少しずつ増えています。
 台湾文学の中でどんな作品が面白いかは、太台本屋 tai-tai booksでも「日本語で読めるおススメの台湾作品」を紹介する小冊子「TAIWAN BOOKS 台灣好書を企画、制作しましたので、こちらをご参考に(発行:台北駐日経済文化代表処 台湾文化センター)。

 そして、日本の書店でも、台湾の本を応援してくれるお店が少しずつ増えています。そんな日本の「台湾推し」の書店さんをピックアップしてご紹介しています。

 その第5回は、2020年自由が丘にオープンした「REWIND -BOOKS & CRAFT BEER TAPS-」さんです。 

※現在、コロナウイルス感染拡大により、各店の営業時間、休店日などは通常と違うものになっている場合があります。来店の際には、各店のサイト、SNS等でご確認ください。

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海外文学好きの独立書店が次に推すのは「台湾文学」!
REWIND -BOOKS & CRAFT BEER TAPS- 
(東京・自由が丘)
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 東京・自由が丘の「REWIND -BOOKS & CRAFT BEER TAPS-」(以下、REWIND)は、”クラフトビールが飲める本屋”として 2020年6月にオープンしました。書店の経営は未経験だけど、「いつでも生活の中に本があった」という店長の高畑明希子さんと、オーナーの高畑勝樹さんのご夫婦が、以前から好きだった街で開業した独立書店です。
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 REWINDは開店直後から、twitterなどのSNS上で「海外文学、特に韓国文学に力を入れている書店」として話題になっていました。現在、お店に入って右手の壁一面は海外文学が主の棚となっていて、イギリス、フランス文学から、北欧、南米文学まで、地域ごとに分類されています。小規模な独立書店ながら、置いてある海外文学のボリュームと種類は、大きな書店に引けをとりません
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「自分は以前から好きでよく読んでいましたが、街の書店に行くと、海外文学はあまり置いていません。REWINDでは海外文学を取り揃え、より身近に感じてほしいと思いました」(明希子さん)

 この数年、日本で盛り上がっている韓国文学についても、開店前から、韓国文学専門の出版社である「クオン」や韓国書専門店の「チェッコリ」に相談して、棚にかなりの面積をとって韓国文学を揃えたそうです。
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「SNSで韓国文学を紹介してみたところ、予想を超える反響があり、今後もっと盛り上がっていく可能性を感じました。韓国文学を目当てに来店してくれるお客さんも多いです」(明希子さん)

 しかし、「海外文学が売れない」と言われて久しい今。実際のところ、売れ行きはどうなんでしょう?と、少し恐る恐る聞いてみると……「よく売れていますよ」との答え。2021年4月には新しい書架も追加し、この後も更に扱い点数を充実させる方針とのこと。なんとも素晴らしい、頼もしい書店さんではないですか!


呉明益『歩道橋の魔術師』がロングセラー2位に

 そのREWINDが、韓国文学の次にフィーチャーしようとしているのが、台湾の本です。
 実は、REWINDのロングセラーランキングの第2位には、呉明益さんの『歩道橋の魔術師』が入っている。
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 『歩道橋の魔術師』は、「最初は台湾文学とは意識せずに手に取って読んでみた」という明希子さん自身が大好きな作品だった。折に触れてお客さんにも紹介していたところ、興味を持って買ってくれる人が多かった。また、韓国の本フェアを開いた際、お客さんから「台湾の本はないのですか?」と聞かれたこともあったそうです。

 いまREWINDでは店頭に台湾関連作品のポップアップコーナーを作り、呉明益甘耀明温又柔作品などを紹介しています(2021年4月現在)。
「現在、欧米の絵本の原書を販売していますが、大人の読者が楽しめる台湾絵本の原書なども、今後扱いたいです」(明希子さん)
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 ↑オーナーの高畑勝樹さんと、店長の高畑明希子さん。
 2021年4月現在、店頭に台湾本のポップアップコーナーがある。


 グラフィックデザイナーであるオーナーの勝樹さんは、現在の台湾カルチャーの仕掛人を紹介する本『TAIWAN FACE Guide for 台湾文創』を読み、「青鳥書店」などの台湾の独立書店にも興味を持ったといいます。
書店は、本の作り手と読者をつなぐ場所。売り場のデザインや見せ方・伝え方の工夫で、読者が今まで知らなかった本との出会いを後押しできると感じています。
 台湾については、個人的には大象體操、落日飛車、滅火器などの台湾バンドが話題になっていたこともあり、いまの台湾カルチャーにも注目していました。そうした本も増やせたらいいなと思っています」(勝樹さん)


 今まで台湾の本を読んだことのなかった読者が、台湾作品に初めて出会う――。今後のREWINDは、そんな場所になっていくのかもしれません。

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 ↑明るい飲食スペース。
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 ↑レジカウンターの奥にあるタップから注がれる生クラフトビールが楽しめます。

【REWIND 高畑明希子さん、高畑勝樹さんの好きな台湾本】
TAIWAN EYES GUIDE FOR 台湾文創』監修 小路輔 トゥーヴァージンズ
星空』著 ジミー・リャオ 訳 天野健太郎 トゥーヴァージンズ
自転車泥棒』著 呉明益 訳 天野健太郎 文藝春秋


REWIND -BOOKS & CRAFT BEER TAPS-
住所:東京都世田谷区奥沢5-38-8-2F
営業時間:13:00~18:00
営業日:火、木、金、日(土曜は不定休)
https://rewindbooks.jp/
Twitter : @rewindbooks
Facebook : @rewindbooksbeer
Instagram : @rewind_books

(文責:店員S 2021年3月取材)

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