台湾の若者の憧れの一つが「独立書店を開くこと」。
 いわゆる‟社会的な地位”の高い仕事や、たくさんお金が儲かる仕事に就くよりも、自分の好きな本を扱う空間を運営したい、本を通じて地元と繋がる場を作りたいと考える人が増えているからです。もちろん、日本でも同じ流れがありますね。

 〔特集〕台湾本を推してくれる書店さん第6回で紹介するのは、地元・和歌山県和歌山市の、町と密着する小さな書店「本屋プラグ」さんです。

※現在、コロナウイルス感染拡大により、各店の営業時間、休店日などは通常と違うものになっている場合があります。来店の際には、各店のサイト、SNS等でご確認ください。

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台湾LOVERの店主が開いた市内唯一のセレクト独立書店
本屋プラグ (和歌山県・和歌山市)
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 和歌山城からもほど近い、昔ながらの商店街の端っこにある小さな書店「本屋プラグ」。和歌山市内では、(古くからある街の伝統書店を除くと)ほぼ唯一のセレクト型「独立書店」だそうです。
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 店主の三木早也佳さんは、もともと建築会社で勤務していましたが、本好きが高じ、京都で行われた「書店をオープンするワークショップ」に参加。友人が始めたコミュニティスペースのリノベーションに関わったのがきっかけで、そのスペース内で書籍販売コーナーの運営を始めました。
 2017年3月にはそのスペースをまるごと引き継いで「本屋プラグ」を開業。2021年で5年目に入りました。現在は三木さんと、共同経営者の嶋田詔太さんの2人でセレクトした古本と新刊書、雑誌などを扱っています。
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 ↑店主の三木早也佳さん(左)と、共同経営者の嶋田詔太さん。

 プラグの品揃えは面白いです。週刊誌や漫画雑誌、児童絵本など、伝統的な町の書店で扱っているような雑誌や書籍も普通に揃っていますし、ご近所の愛書家のお家から買い取ったという郷土史の全集なども頭上の棚にどっしり鎮座しています。現在、古本と新刊の割合は8:2くらいだそうです。
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 プラグは、とてもアクティブな書店です。SNSでの情報発信のほか、店内での落語会映画の上映イベント「和歌山ミニシアター企画」など、地元を面白くする企画を多く立ち上げています。2021年4月からは、毎日新聞で月1回のエッセイ連載「本屋プラグのためにならない読書も始まりました。


台湾でのブック&カルチャーイベントにも出店

 三木さんは台湾ファンでもあります。
 プラグはごく小さな書店ですが、その一角に「台湾コーナー」があり、文学から人文書、台湾原書や雑貨まで、かなり充実した品ぞろえ。毎月の新刊情報で台湾に関する本をチェックして、発売前に予約を入れるようにしています。売れ行きが良いのは、やはり台湾の食や旅行に関する本だそうです。
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 店内に台湾コーナーを作るだけでなく、コロナ前は、台北で行われた「ZINE DAY Taiwan 2017」「Culture & Art Book FAIR in TAIPEI」(’18)や、台南の「旅行與咖啡的週末捷徑」(’19) など、台湾で行われる本やZine関係のイベントにも毎年出店していました。台湾でのイベントでは、日本のZineや、サブカルチャー系の個人出版物などを販売。日本の情報が大量に入る台湾でも、滅多に手に入らないマニアックなものばかりなので、台湾文青からの反響が大きかったそうです。

 プラグの品揃えのもう一つのテーマは、三木さんと嶋田さんが生まれ育ち、今も暮らしている地元・和歌山の、郷土史や郷土文化についての本。
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 海の向こうに目を向けるだけでなく、自分の足元の歴史や文化をしっかり見据える、プラグはそんな書店です。

【本屋プラグ 三木さんおすすめの台湾本】
台湾物語  「麗しの島」の過去・現在・未来』著 新井一二三、筑摩書房
月イチ台北  どローカル日記』著 森井ユカ、 集英社
佐藤春夫台湾小説集 女誡扇綺譚』著 佐藤春夫、 中央公論新社


本屋プラグ
住所:和歌山県和歌山市万町4番地 ニューリチャードビル1F
営業時間:12:00〜20:00(土日祝18:00まで)
定休日:水曜日
Facebook : @books.plug  
Instagram : 
@books_plug

(文責:店員S 2021年3月取材)

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