著者:張國立(Chang Kuo-Li、ちょう・こくりつ)
出版社:馬可孛羅文化Marco Polo Press
刊行:2019年2月初版
長さ:352頁、中文で約11万字(日本語にして約18~19万字)
長さ:352頁、中文で約11万字(日本語にして約18~19万字)
キーワード:推理、警察、軍事、スナイパー、秘密結社、陰謀、バディ、ユーモア
★北米、ドイツ、フランス、オランダ、ロシア等で刊行済み。映像化権許諾済み
ローマのスペイン広場で、台湾総統府顧問が暗殺される。
撃ったのは、イタリアの小村で炒飯を売っていた元・海軍狙撃手。
定年退職まで12日となったベテラン刑事が
台湾、基隆のホテルで“自殺”した海軍士官の事件を追ううち、
国家の軍事機密と、謎の組織との関わりが浮かび上がる……。
【あらすじ】
イタリアの小さな町マナローラで炒飯を売りながら暮らしていたスリーパーセルの狙撃手は、指令を受けローマへ。スペイン広場に面するカフェで男性を射殺する。しかしその直後、自らも狙撃を受ける。
定年退職まであと12日となった刑事局反黒科(やくざ対策科)の刑事・老伍(ラオウー)は、基隆のホテルの一室で、海軍の一等士官・郭為忠が銃で死んでいる現場に向かわされる。老伍は、これが自殺ではないと直感するが、国防部は郭の死を自殺として早々に事件を終結させようとする。検死を担当した法医が、郭の上腕部に甲骨文字の「家」という刺青が彫られていたことを老伍に知らせる。
台湾の北部海岸で額を撃たれた男の死体が上がり、身元は陸軍司令部の武器獲得採購室執行長に就任したばかりの邱清池と判明する。老伍の同僚で刑事局反黒科科長の蛋頭(ダントウ)が、総督府の戦略顧問がローマで射殺された件で、急遽現地に向かうことになったと連絡してくる。
マナローラに戻った狙撃手=艾禮(アイリー)に更に追手が迫る。艾禮はラ・スぺチアの修道院にいるフランス外人部隊時代のもと同僚の助けを借り、イタリアを脱出する……。
(後略)
(後略)
【作品のポイント】
実在の未解決事件をモデルにした弩級のエンターテインメント小説
著者・張國立はデビュー30年、60作以上の著作を持つベテランのエンターテインメント作家。実在の未解決事件(1989年の「ラファイアット事件」。フランスからの軍艦購入にまつわる中華民国軍の大汚職事件)をモデルに本作を構想した。週刊誌記者時代に取材した事件の内幕を混ぜ込みながら、主人公の刑事・老伍の「退職前の12日間」という短い期間に、ヨーロッパと台湾を跨いで展開されるアップテンポでスリリングな物語づくりの手法はみごとだ。
個性あふれる登場人物たちのユーモアたっぷりのやりとりも魅力
構成の綿密さだけでなく、登場人物たちの生き生きとしたキャラクター設定や関係性、やりとりの面白さに、まさに熟練の著者の手腕が発揮されている。口は悪いが観察力鋭く、事件解決には情熱を惜しまない不屈のベテラン刑事・老伍と、彼をとりまく個性あふれる登場人物たちの会話は、ユーモアと“粋”がたっぷりで楽しい。読みながら、犯罪捜査映画のシーンが頭に浮かぶこと間違いなし。
国際的な陰謀の間に挟み込まれる「台湾ローカル美食」
もう一人の主人公である若き狙撃手は、潜伏先のイタリア人たちをもうならせる炒飯を作る腕を持ち、物語のところどころでその腕を披露する。他にも、基隆名物の「栄養三明治」(揚げパンサンドイッチ)、秘密結社の長老が振舞う黄ニラの水餃子、黒道(やくざ)の娘のカフェ店主が作る牛肉煮込みライス、そして朝食店の鹹豆漿(豆乳スープ)、牛肉捲餅(牛肉クレープ)、蘿蔔糕(大根もち)など、スリリングな物語の合間に挟み込まれる台湾ローカル美食も、本作の隠れた魅力の一つ。
【著者】張國立 (Chang Kuo-Li、ちょう・こくりつ)
1955年台北生まれ。輔仁大学日本語文学科卒業。もと『時報週刊』編集長、兼社長。数か国語に通じ、歴史、軍事、各種兵器、スポーツ、美食文化、旅行など、幅広い分野に精通する。

↑すでに刊行済みの『炒飯狙撃手』北米、ドイツ、フランス、オランダ、ロシア等各国版単行本。
最新更新:2024年3月20日
初回投稿:2022年9月18日